エンジニア界隈では、しばしば「SESはブラックだからやめとけ!」「SESに入ってもスキルが身につかない!」といった批判を見かけます。
未経験からエンジニアに転職しようとしている方は、こういった評判を見ると、SES企業についていいイメージを持たない方も多いはずです。
そこで今回は、SESが「やめとけ」と言われてしまう理由についてご紹介します。
未経験の方で、SESに対して不安を抱えている方は、この記事を読んで、なぜSESが「やめとけ」と言われてしまうのか理解を深めてください。
SES(System Engineering Service)とは?
SESとは、「システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)」の略称で、クライアントに技術者を派遣するサービスのことを指します。
具体的に説明すると、SES企業は、案件を抱えているクライアントにエンジニアを派遣することによって、技術力を提供し、その対価として報酬を得ています。
SESは契約形態がグレー?
SESの問題点は、契約形態自体が非常にグレーである点です。
SESは、本来人材を派遣して、クライアント先に常駐させて開発をする労働力を貸し出しているため、業態自体は「派遣事業」を行なっていることになります。
派遣業者として、事業を行う場合は、派遣法に基づいて「派遣契約」を結び、派遣する人の権利を保障した上で、事業を行わなければなりません。
しかし、SESの場合は、準委任契約という契約方式で契約を行なっており、契約形態自体が非常にグレーであると言われています。
派遣を行なっているのにも関わらず、請負の形で仕事をしているため、「偽装請負」の疑いあるのです。
SES企業がなくならないのは、現場での指揮命令権が曖昧なため、本当に派遣行為なのかどうか、基準が非常に判断しにくいためです。
SESが「やめとけ!」と言われてしまう7つの理由
では、SESが「やめとけ」と言われている理由は一体何でしょうか。
今回は、なぜSESはやめとけと言われるのかについて、よくある理由を7つご紹介します。
- 年収が低く、給与もなかなか上がらない
- 市場価値が上がらないことが多い
- リストラされやすい立場にある
- 客先だけではなく自社での仕事もある
- 常駐先がない場合カットが当たり前
- 案件ごとに人間関係を構築しなければならない
- 構造的に長時間労働になりやすい
①年収が低く、給与もなかなか上がらない
まず1つ目に、年収が他のエンジニアと比べて低いことが挙げられます。
IT業界(受託開発メインの事業に限る)においては、基本的に多重下請け構造で仕事が回っています。
多重下請け構造では、元請け、2次請け、3次請けと大きなプロジェクトを細分化して下の階層の開発会社に渡していきます。
元請けは主に「SI企業」と呼ばれる人達が担当し、上流工程の設計・構築や要件定義などを行います。
その下流にいる開発会社たちでシステムを開発していき、各開発会社で細分化されたシステムを作っています。
この多重下請け構造は、元請けのエンドユーザーから実際に仕事をするエンジニアの間に何社も会社が挟まっており、下流に行けばいくほど、報酬をピンハネされていきます。
だいたいのSES企業は、多重請負の形をとっており、ただ単にエンジニアを何社も挟むことによって何もしていないのに、中間マージンだけ搾取していることが多いのです。
ただ間に入っているだけの会社に中間マージンを抜かれ続けて、結局SESのエンジニアに残るお金はスズメの涙ほどになってしまうことが多く、非常に給与が少ないです。
また、下流の案件を取るSES企業は、その先もずっと下流の案件を取り続ける傾向にあり、事業自体の収益性が上がらないため、エンジニアの給料もなかなか上がらないことが多いのです。
②市場価値が上がらないことが多い
全てのSES企業に言えるわけではないですが、SESの企業に入ってしまうと、エンジニアとしてのスキルが身につきにくく、市場価値が上がらないことが多いです。
SESは、しばしば「案件ガチャ」と言われますが、案件によって仕事内容が全く異なります。
案件によっては、システムのテストだけを行い続ける「テスター」という仕事や、エクセルでデータを入れるだけのエンジニアの仕事とは程遠い仕事をやらされることも多いです。
市場価値の低い仕事をずっと続けていると、結果的にスキルが全く身につかず、キャリアアップもできないため、年収も一向に上がらないという負のサイクルに陥ってしまいます。
スキルが物を言うエンジニアにとって、市場価値が上がらないというのは死活問題なので、SESに入るということはスキルが身につきにくいということを覚えておきましょう。
③リストラされやすい立場にある
SESのビジネスモデル的に、エンジニアは非常にリストラされやすい立場にあります。
SESは実質派遣商売であるため、人材が商品であり、商品価値の少ないエンジニアは会社側するととても迷惑です。
スキルのある、出来ることの多いエンジニアは、どの現場にも引っ張りだこなので、案件に入れやすく、利益を取ってきてくれるため、とても重宝されます。
しかし、現場で何度も問題を起こしていたり、相対的にスキルの低いエンジニアは、会社側からすると必要ありません。
SESとはいえど、エンジニアは技術力の世界なので、スキルの低いエンジニアはすぐに切られる可能性があることは覚えておいてください。
④客先だけではなく自社での仕事もある
SESでは、客先に常駐してシステム開発などの仕事以外にも、自社での事務作業も存在します。
多くのSES企業では、会社の帰属意識を高めるために「帰社日」というシステムを設けていますが、この悪しき習慣が負担になっていると、エンジニアから非難されています。
以下にTwitterでの、帰社日に関する口コミをまとめました。
残業続きで眠たい中,月一の帰社日で知らない人だらけの宴会に参加させられ,面識の少ない上司が自分の業績評価をしていることを知ったSESちゃん pic.twitter.com/Im8mgG4lfT
— なかよし@SESちゃん4コマ漫画&LINEスタンプ (@nakayoshi251) May 11, 2018
SESの会社でよく見るのが 社員の帰属意識を高める対策として 月一の帰社日を設け、 休日のイベントを開催し、 月報や週報の提出を行う。 いつも思うけど、 この辺エンジニアの負担を大きくする効果の方が大きいよね。 だから、「うちの会社頭悪いんだよね」なんて身内に言われるんだぞ…笑
— りんご@IT×行動心理 (@nega321345) February 20, 2019
そもそも帰社日の風習いるの? 大抵意味のない情報の共有じゃん。 営業情報や経営方針の共有はリーダだけで行い、後はメールなり社内サイトで共有で良いでしょ。 帰りたい人は帰る形でOK。
— 元ニートのSE (@neet_se) June 14, 2019
客先で疲れて帰ってきているにも関わらず、帰社日があるのはエンジニアにとって非常に負担となっており、ほとんどの会社でこの帰社日が強制されているのが、現実です。
⑤常駐先がない時は給与カットが当たり前
SES企業では、常駐先がない場合、給与カットが当たり前です。
基本的に常駐先がないということは、会社的には仕事がないということなので、その間何の利益も生み出されません。
しかし、多くのSES企業では自社で社員としてエンジニアを採用しているため、常駐先が見つからない間も、給料を払わなければなりません。
この間、自宅や自社で待機しているエンジニアは利益を生んでいない状態になるため、この分の給与をカットされることは非常に多いです。
例えて言うなら、居酒屋のバイトで「最近売り上げ上がってないから、シフト1週間分くらい削るね!」と言われているのと同様です。
給与も案件が回ってこなかったら、こちらでコントロールすることが出来ないということも覚えておきましょう。
⑥案件ごとに人間関係を構築しなければならない
基本的に、客先に常駐して働くことになるのですが、プロジェクトが終了したら、また次の現場へ派遣されます。
せっかく何ヶ月か働いて、現場の管理者などと人間関係が築けたところで、またゼロから人間関係を作っていかなくてはなりません。
案件ごとに毎度人間関係を構築していかなければならないため、人間関係を築くのが苦手な方にとっては、負担が大きいです。
⑦構造的に長時間労働になりやすい
SESは準委任契約で契約していますが、実質派遣事業を行っているため、指揮命令権が客先の開発現場に委ねられることが多いです。
準委任契約では法律上、本来は自社(SES企業)に指揮命令権が存在するのですが、実際は現場の開発チームにあるため、始業時間や退勤時間、有給などの休暇日も現場に握られることが多いです。
もちろん、きっちり時間通りに勤務時間を管理している企業も多いですが、客先によっては、長時間労働を強いられることもあることは覚えておきましょう。
未経験→エンジニアはSESに就業することが多い?
未経験からエンジニアに転職する人は、SESからキャリアをスタートさせることが多いというのは事実です。
特に、第二新卒やフリーターからエンジニアになる方は、「未経験OK」と募集要項にある企業に入社することが多いですが、ほとんどがSES企業です。
よく「自社開発を行っている企業に入るべき!」と言われますが、何もスキルを持っていない状態から、そういった自社開発を行っている企業に行くのは至難の業です。
SESからキャリアをスタートさせるのは、怖いかもしれませんが、スキルアップできる案件があることも事実です。
まずは、SESに潜り込んで、スキルをつけた上で独立する、もしくは転職するといったキャリアプランを歩む人も多いということは知っておきましょう。
SESに転職しないためにはどうしたら良い?
未経験からSESに転職しないためには、Web系のプログラミングスキルを身につけて、自社でサービスを開発する企業に入る必要があります。
自社開発を行っている企業に未経験から入るのは非常に難しいですが、出来ることならSESではなく、自社開発を行っている企業からキャリアをスタートさせたいですよね。
SESではなく、自社開発サービスを行っている企業に未経験から転職する方法は、以下の2つがあります。
- 独学でプログラミング学習して成果物を元に就活
- 有料のプログラミングスクールに入って転職先も紹介してもらう
①の方法は、なかなか難易度が高いです。
独学でプログラミング学習をするのは不可能ではありませんが、初心者だとエラーが出た時のシューティングが難しく、同じエラーで何日も悩んでしまい、嫌になってそのまま挫折・・・というケースが非常に多いです。
ただ、毎日諦めずにコツコツと学習出来る、また、勉強会などに行って、メンターを見つけられる方は、独学でプログラミング学習をしてWantedlyやGreenなどのサイトから自分で応募するのはアリかもしれません。
自社開発企業に未経験から転職するために、1番おすすめなのは②の方法です。
プログラミングスクールなら、体系的に作られたプログラムの元で学ぶことが出来ますし、転職保証付きのエンジニア転職コースを設けているスクールもたくさんあります。
この方法であれば、学習につまづくことも少ないですし、講師にどんどん質問出来るため、自分のペースで成長していけます。
有料のプログラミングスクールの中には、「自社開発企業のみ」を紹介しているところもあるため、未経験からでも十分にチャンスがあります。
SESに転職したくない方におすすめのスクールは以下の3つです!
おすすめは有料のプログラミングスクールです。無料のスクールよりもサポートがしっかりとしており、転職をよりスムーズに進められますよ。
まとめ
今回は、SESがIT業界から「やめとけ!」と言われている理由についてご紹介してきました。
SES企業があまりいい評判ではない理由は、業界体質にあるため、IT業界がこの仕組みを無くさない限り、SES企業は存在し続けます。
未経験からエンジニアになりたい方は、自分がSES企業からキャリアをスタートさせるのか、それともしっかり学習して転職するのか、よく考えて選択するようにしてくださいね。