Bluetoothは、スマホとイヤホン、タブレットとキーボードなど、デジタル機器同士を無線で繋ぐ(ペアリングする)ことができる機能です。
現在のスマホ、タブレット、パソコンなどの機器のほとんどにBluetoothは搭載されています。ですがBluetoothについて、
「名前は聞いたことがある」
「使っているけど仕組みを知らない」
という人も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、Bluetoothのバージョンの違い、最新のBluetooth5.1についてご説明していきます。
Bluetooth製品を購入するときにチェックすべきポイント
Bluetoothのイヤホンやスマホを購入するときは、以下の3点をチェックして選びましょう。
- Bluetoothのバージョン
- 電波到達距離『Class』
- プロファイル
特にチェックしてほしいのが、Bluetoothのバージョンとプロファイルです。
プロファイルに対応していないバージョンを選んでしまうと、場合によっては接続できないこともあるので注意してください。
それでは次章から、この3点について詳しくご説明していきます。
Bluetoothのバージョンについて
2019年12月時点で、Bluetoothの最新バージョンは『Bluetooth 5.1』と発表されています。
1999年のBluetooth 1.0誕生から17年。2016年にはBluetooth 5.0が発表されました。前バージョンであるBluetooth 4.2と比較して通信速度は2倍、通信範囲は4倍も向上。より遠くから接続できるようになり、遅延も軽減されました。
Bluetooth 5.0発表からさらに3年後の2019年1月に、現在のバージョンであるBluetooth 5.1が発表されました。今後もアップデートが進むでしょう。
しかし、現在発売されているスマホ端末の多くは『Bluetooth 4.0』世代。最新バージョン対応機器の普及は時間がかかるため、私たちがその恩恵を受けられるのはもう少し先になりそうです。
Bluetooth 4.0世代は、バージョン3.0に比べると消費電力が少なくなりましたが、通信速度は遅くなりました。それぞれのバージョンによる違いは次のとおりです。
バージョン | 機能 |
ver1.1 | 普及バージョン |
ver1.2 | 2.4GHz帯域の無線LAN(11g/b)との干渉対策 |
ver2.0 | EDR対応ならver1.2の約3倍のデータ転送速度に(最大転送速度3Mbps) |
ver2.1 | ペアリングの簡略化。バッテリー寿命を最大5倍延長できるSniff Subrating機能を追加 |
ver3.0 | 従来より約8倍のデータ転送速度に(最大転送速度24Mbps) |
ver4.0 | 大幅な省電力化(BLE)対応。様々なプロファイルに対応。 |
ver4.1 | 4.0を高機能化。自動再接続やLTEとBluetooth機器間での通信干渉を抑制。 |
ver4.2 | セキュリティの強化と転送速度の高速化。 |
ver5.0 | ver4.0よりデータ転送速度が2倍。通信範囲が4倍に。 |
ver5.1 | 方向探知機能追加。 |
最新バージョン Bluetooth5.1について
現在主流となっているBluetooth 4.0は2009年ごろに発表された規格で、Bluetooth 5.0になるまでおよそ7年かかりました。
Bluetoothとしては4.0世代である程度完成されていたと感じますが、Bluetooth 5.0では転送速度もさらに速くなり、スマホやパソコン、マウスやイヤホンなどに対応するのが楽しみな規格です。
2019年12月時点の最新バージョンであるBluetooth 5.1には、方向探知機能が新たに追加。具体的には、Bluetooth信号の送信・受信角度を割り出すことで、cm単位でどこにあるかがわかるようになりました。
これまでの、電波の強弱でペアリングされた機器が近いか遠いかを探知するのとは違い、ペアリングされた機器のある方向まで探知できるようになったのです。
方向探知機能がユーザーに提供する大きなメリットは、スマホやタブレットなどのホストデバイスを使い、ペアリングされたBluetooth機器がどこにあるかわかることです。
例えば、鍵にBluetoothタグを付けスマホとペアリングしておけば、失くした時に探しやすくなります。また、店舗にある商品にBluetoothタグを付けることで在庫管理が効率化できるなど、ビジネス面での活用も期待されます。
しかしながら、Bluetooth 5.1はまだまだ搭載されているパソコンやスマホが少ないため、現状はBluetooth 4.0台が主流。GoogleやSamsungなどが採用をはじめたら、スマホ・タブレット業界もBluetooth 5.0以降へ移行していくのではないかと思われます。
2017年9月に発売されたiPhone8シリーズ以降はBluetooth 5.0に対応ですが、2019年秋に発表されたiPhone11シリーズもBluetoothのバージョンも 5.0です。
なので、Bluetooth 5.1を搭載した機器の普及はしばらく時間がかかるでしょう。
最新バージョンだからといって音質が変わることはない
バージョンアップしても、ユーザーに具体的なメリットがあるとは限りません。
一例として、バージョンが上がれば上がるほど音質が良くなるわけではないことは理解しておくべきポイントです。音楽のやり取りをするためのプロファイル「A2DP」はBluetooth 1.1に定義された規格です。
これまで特に大きな改良を加えられたことはありません。音質を上げるためにバージョンアップをしても効果は期待できないのです。
ただ、Bluetooth 5.0になりデータ転送速度が速くなったため遅延やノイズが減ります。そのため以前より途切れないクリアな音を楽しめるようになっており、音質が良くなったと感じることはあるようです。
Bluetooth:バージョン間の互換性
結論から言うと、Bluetooth 3.0以降であれば、下位バージョンとの互換性があります。
互換性の例
- Bluetooth 5.1:5.0、4.2 … 1.1
- Bluetooth 5.0:4.2、4.1 … 1.1
- Bluetooth 4.2:4.1、4.0 … 1.1
- Bluetooth 4.1:4.0、3.0 … 1.1
Bluetooth 4.1以降は互換性の問題はありません。が、バージョン4.0と3.0の機器間に関しては注意点があります。
バージョン3.0と4.0の互換性について
4.0から対応しているBLE(Bluetooth Low Energy)は、4.0以降同士の機器でないと使えないので、4.0と3.0は互換性がないと言われています。
しかし、機器によっては使えます。4.0対応の機器の中でBLE通信と、Bluetooth3.0以前の通信方式を兼ねそろえているものもあります。見分ける方法はBluetoothのロゴです。
確認するポイントはBluetoothロゴマークの下にある『SMART』等の記載です。このマークの意味を説明すると、次の通りそれぞれ分類されます。
- 無印マーク:Bluetooth 3.0以前の通信方式のみ
- SMART:BLE通信のみ(バージョン4.0のみの接続)
- SMART READY:無印とSMARTのハイブリッド
注目してもらいたいのは『Bluetooth SMART READY』です。このマークがあるBluetooth製品は、BLE通信方式と、Bluetooth 3.0以前の通信方式の両方を使うことができます。つまり、バージョン4.0でもこのロゴマークがついている製品でしたら、3.0以前のBluetooth製品と通信が可能となります。下位バージョンと互換性を考える場合は『Bluetooth SMART READY』のロゴが入っている製品を選びましょう。
電波の到達距離『Class』とは
BluetoothにはClassという概念があります。電波の到達距離の目安のことで、現在使われているClassは3種類です。
- Class1:最大100m
- Class2:最大10m
- Class3:最大1m
Bluetooth間で同じクラスを選ばないと使えないということはないので、正直ここはあまり意識しなくてもいいかなと思います。とりあえずClassという電波の最大到達距離があるんだ、と覚えておけば問題ありません。Class2なら十分な距離です。
Bluetoothをもつ機器間で送信機と受信機のClassが違う場合は、短い方のClassに合わせて繋がります。例えば、イヤホンがClass2で、音楽プレイヤーがClass1でしたら、Class2のほうに合わせて繋がるようになっています。
なお、現在多くのBluetooth機器で使われているのはClass2。Class3を見る機会はかなり少ない状況です。
Bluetoothのプロファイルについて
Bluetoothのバージョンによって対応しているプロファイルが違います。特に4.0以降は今までのバージョンより2倍以上のプロファイルが対応しています。なので、できればBluetooth製品を購入する場合は、『Bluetooth 4.0以上』を選ぶのが無難です。実際にどの程度プロファイルが対応しているかをご紹介します。
バージョン3.0以前のプロファイル
プロファイル名 | 機能 |
DUN | 携帯やPHSを介した、インターネットへのダイヤルアップ接続 |
FTP | データ転送 |
HID | 入力装置をワイヤレス化(マウスやキーボードなど) |
OPP | 名刺データの交換 |
HSP | 音楽Playerなどのヘッドセットとの接続、通信 |
HFP | ヘッドセット等の通話機能 |
A2DP | ヘッドフォンやイヤホンに音声を転送する機能 |
AVRCP | AV機器のリモコン操作 |
日常で音楽を聴く分には、バージョン3.0以前のBluetoothでも問題はないでしょう。Bluetooth 3.0以前の機器にもある程度の機能は備わっていますが、Bluetoothを使ったテザリングやBluetoothを使ったプリンターへのデータ転送などができないなどマイナスポイントもあります。
バージョン4.0以降に追加されたプロファイル
プロファイル名 | 機能 |
Battery Service Profile | バッテリーの残量をお知らせ |
FMP | デバイスの再検索 |
TIP | 時刻の修正 |
ANP | 音声やメールを通知 |
PASP | 電話着信を通知 |
HOGP | 低消費電力接続 |
SPP | Bluetooth機器を仮想シリアルポート化 |
HCRP | ファイルの印刷・スキャン |
BPP | プリンターへのデータ転送 |
BIP | 画像の送受信・印刷 |
PAN | Bluetoothでのテザリング |
VDP | ビデオデータをストリーミング配信 |
PXP | 接続機器間の距離をモニタリング |
HDP | 健康管理機器同士を接続 |
先ほど掲げた、テザリングやプリンターへのデータ転送はバージョン4.0にて追加されました。その他にも、一度Bluetooth接続が切れた際に、自動で再接続を試みるFMPなどが追加されています。かゆいところに手が届くプロファイルが追加されたので、利用時の快適度は向上していると言えます。
Bluetooth製品を選ぶときのポイント
以上、3つのポイントを説明してきました。Bluetooth機器を購入する際には、次のポイントを順番にチェックしてみましょう。
- バージョン
- 使用プロファイル
- Class
- バージョン4.0と3.0ならば、Bluetooth SMART READY対応かどうか
最低でも、バージョンはチェックしておきたいところです。最近のBluetooth機器は、ほぼ4.1以上となっているので、SMART READYはそこまで気にする必要はないでしょう。基本的に下位バージョンなら、互換性があると思っても大丈夫です。
最後に
以上が、Bluetoothのバージョンの違いについての説明でした。
基本的に4.0以上のバージョンを受信機、送信機共に選んでおけば問題ありません。大抵の製品はすでにBluetooth4.0以上が主流となってはいます。また、昔はよくBluetoothイヤホンは音質が悪い、ぶつぶつと音が切れやすいと言われていましたが、最近のBluetoothイヤホンはその問題がだいぶ改善されたように感じます。
ただ、距離が離れてしまうとやはりまだまだ遅延や音切れが起こってしまうので、できれば半径2m以内でBluetooth接続したいところです。