5Gの導入により、スマホが快適に使える状況を待ち望むのと同時に、海外で騒がれている「健康被害」が気になるところです。
国によっては裁判による争いや、導入禁止状態にもなっています。しかし、中にはデマ情報も多く、健康被害と言われている内容が全て真実とは限りません。
実際5Gによる健康被害は考えられるのでしょうか?様々な調査結果から、5Gの健康被害に関する真実を見極めるのが大切です。
5Gで健康被害は起きるの?
5Gの導入で健康被害が起きる!と欧米を中心に騒がれていますが、専門家は悪影響はないと判断しています。
実際、日本では健康被害が問題にすら上がっていません。日本では2020年3月から商用化が始まり、都市部を中心に一部の都道府県でのみ使えるようになりました。5Gは少しずつ使える範囲を広げ、全国へと展開しています。
ただし、5G専用の端末を購入しなければならないため、まだ一般的には普及していません。海外の反応を受けて5Gに対して不安の声は上がっていますが、日本で5Gによる健康被害は確認できていません。
5Gの健康被害が懸念される原因
5Gの健康被害は、そもそもなぜ心配されているのでしょうか?健康被害が懸念される原因を調べてみました。
何十万もの小型基地局を設置しなくてはならない
5Gは従来の通信環境とは異なり「超高速化」「超低遅延」「超多同時接続」を実現します。そのため、4Gでなら5分かかっていた動画のダウンロードが、1分もかからずに即座にダウンロードできます。
つまり、これまで以上に周波数の高い電波が必要だということです。電波は周波数が高くなればなるほど、障害物の裏に回り込みにくく、遠くへ飛びにくいです。全国展開するとなれば、200mおきに基地局を設置する必要があります。
自宅付近や勤務地など、電柱のような感覚で基地局が設置されるため、基地局から出る電磁波が健康に影響を及ぼすと考えられています。
基地局の近さと電波の強さは関係ない
携帯電話の基地局は電波を特定の方向に飛ばしています。基地局の真下に電波が飛ぶわけではないので、基地局に近いからといって強い電磁波を受けるわけではありません。
電波は遠くに飛ばさないといけないため、むしろ垂直に飛ばされていると考えた方が自然です。また、基地局は人体に影響がない程度のSAR値が管理されていると財務省が発表しています。
携帯電話の電波で健康被害は起きません。電気通信事業者がSAR値を管理しているので、気になる方はホームページで確認してみましょう。
大幅な高速化を実現する周波数帯ミリ波の影響
5Gが高速通信を行えるのは、高周波数帯ミリ波による技術の元です。低周波数帯と比べると、長距離通信の信頼性が劣るため、小規模なアクセスポイントが必要になります。
ミリ波による信号は危険性が高いとされており、強い電磁波にさらされる危険性が懸念されています。
ミリ波への切り替えには時間がかかる
5Gの強みとなるため、特徴としてミリ波を押している部分は大きいです。しかし、ミリ波に完全に切り替えるとなれば、アクセスポイントの設置に時間がかかってしまいます。
5Gはミリ波の電磁波をメインとしているわけではありません。米国で普及しているものは、テレビ放送で利用していた低周波数帯を使っています。
新しい周波数に切り替えるとなれば、費用も時間もかかります。5Gに変えても、今まで使ってきた周波数帯を今後も使い続けるでしょう。
5G健康被害の懸念から欧米各所で導入禁止!
欧米のいくつかの街では、健康被害を懸念して5Gの導入を禁止しています。そのきっかけとなったのは、ベルギーの首都ブリュッセルが、5Gの実験・導入を禁止する措置を発表したためです。
これは、デモ活動が起きるほどの5Gへの健康被害の不安の結果として出ています。
ベルギーによる講義デモ
2020年1月26日ベルギー首都ブリュッセルで、約200人の科学者と100人の市民が抗議デモを行いました。
実はデモを起こしたグループは、これが初めての抗議ではありません。2019年11月にも、204の国から総勢17万2,395人の署名を受けて中止を求めていました。
賛同者の中には医師も入っており、医療関係者からも健康被害のリスクを訴えている人がいます。
一時導入停止状態になったオランダ・スイスのデモ
同じようにオランダやスイスでも、健康被害を訴えるデモ活動が行われています。
2019年10月に英国南西部デボン州の小さな街で、健康被害による懸念から署名活動が行われました。小さな街の住民8,000人のうち、1,600人以上が署名活動に参加。
それが原因で、一時導入停止状態になりました。各所のデモ活動やベルギーのこの決定を受けて、米カリフォルニア州のいくつかの街は、検討無しに導入禁止としています。
5Gの健康被害を欧米諸国が警戒する理由
5Gの健康被害に関する懸念は、欧米諸国を中心に広がっています。なぜ、欧米諸国は5Gを警戒しているのでしょうか?心配の種となる原因を探ってみました。
2万基以上の衛星の打ち上げ
5Gの導入にあたり、アメリカと中国を中心に2万基以上の衛星が打ち上げられる問題が心配されています。
通信衛星の数が10倍以上に増えるため、宇宙から電磁波が送られているとなれば、健康被害だけではなく環境問題も懸念されます。
しかし、通信衛星の打ち上げは5Gサービスのためだけではありません。航空機内で使えるネットサービス、テレビのBS・CS放送などにも使われています。高速データ通信提供が目的なので、様々な会社が既に多くの衛星を打ち上げています。
1つの情報だけを見て鵜呑みにしてしまっているのが、警戒する原因の一つです。
国連職員クレア・エドワーズの主張
国連議員であるクレアエドワーズが、積極的に5Gのリスクを訴えているのも原因の一つです。
彼女は、「過去20年間で地球上から昆虫の80%が死滅した。もし5Gが本格稼働すれば100%が死に絶えるだろう。昆虫の次は動物、そして人間も同じ運命をたどる」と述べています。
大きな組織を動かせないと考えた彼女は、自ら辞職し、民間の立場から5Gのリスクの講演を行っています。
しかし、彼女の主張を裏付ける内容は確認されていません。積極的な活動が、5Gの健康被害の不安を強めているのです。
活動団体「stop5G.be」が1月に公開した文書
5Gの健康被害から、5Gの禁止活動を行っている活動団体が公開した文書にも、様々なリスクが書かれています。
5Gは細胞ストレスや遺伝子の変化により、子供や妊娠初期に影響を受けやすいと主張。不妊に繋がったり、子供が自閉症になったりすると訴えています。
文書の真偽はわかりませんが、元々5G禁止を訴えている団体による主張のため、全てを鵜呑みにするのは躊躇われるでしょう。
数々の健康被害の報告
海外でデモ活動が起きるきっかきっかけになったのは、5Gの実験により健康被害が出た報告を受けたためです。しかし、5Gによる健康被害を調べてみると、真偽を確かめる必要がありそうです。
サクラメント消防士の健康被害
5G電波の近くに基地を構える消防士が、不眠や頭痛による健康被害を訴えました。5Gの電波が近くにない基地に異動すると、健康被害が消えたそうです。
ただし、この健康被害の情報源は少なく、情報源となっているのはCBSのサクラメントだと言われています。サクラメントでは5Gの反対運動が起こっており、実際5Gに関するソースをCBSのサクラメント局で調べてみると、否定的な内容ばかりでした。
真偽はわかりませんが、サクラメント市が5Gの禁止を訴えるために情報を作った可能性も否定できません。
ゲーツヘッドによる流産
LEDライト一体型の5Gアンテナを設置したところ、流産が増えたという報告が上がりました。しかし、流産の可能性は基本的に高く、一番流産率の低い年齢である30~34歳の流産率は10%です。
例え周りの人の流産が増えたとしても、確実に5Gが原因とはいいがたいでしょう。妊娠初期に影響があるという情報を元に、被害を訴えている可能性があります。
ムクドリ大量死のニュース
5Gの電波の影響で300羽のムクドリが死亡したというニュースが、2018年Facebookを通じて拡散されました。当時このニュースをきっかけに5Gの健康被害を訴える声が強まりました。
しかし、これはフェイクニュースだと後に発覚しています。最初にこのニュースを記事にしたのは、反5Gの陰謀系サイトを運営する管理者です。そこから情報が拡散されていき、日本でも女性自身が記事にしています。
SNSによる拡散や、複数の記事に載ったことから今でも信じている人がいます。
オーストラリアが5Gのフェイクニュースに対抗!
5Gの健康被害を訴えるためのフェイクニュースはたくさんあります。ムクドリの大量死もその一つですが、健康被害を世間に知らしめて導入禁止に持っていくために偽情報を拡散している団体がいます。
これを受けてオーストラリアは、5G反対派が出すフェイクニュースに対抗するため、900万ドルの予算をつけて偽情報に対応すると発表!
米メディアによる情報では、5Gのフェイクニュースはロシアから大量にばらまかれているとも言われています。
5Gの健康被害を訴える全ての情報がフェイクとは言えないが、反対派が少しの問題点を大きくし、不安を煽っている可能性は十分にありえます。5Gの健康被害に関するニュースや情報を見かけても情報源を調べた上で参考にする必要があるでしょう。
電波通信による健康被害の懸念は昔からあった?
5Gの健康被害を懸念する声が上がっていますが、実は携帯電話の電波による健康被害の不安は今に始まったことではありません。
スマホになる前から、基地局建設に反対するケースは何度も起きています。電磁波の健康被害を心配する人は昔からいたのです。
ペースメーカーに与える影響の懸念
2G時代の携帯電話の時代では、携帯電話の電波がペースメーカーに影響を与えるとされていました。そのことから、当時は端末を22㎝離すように総務省から言われていました。
「優先座席付近では携帯電話の電源を切るように」と言われていた記憶がある人もいるのではないでしょうか?
それが3Gに変わったことで、影響が少なくなったと判断されました。そのため2013年以降は15㎝離せば問題ないと言われています。
5Gの電磁波に対する不安は、当時のペースメーカーへのイメージが影響しているかもしれません。実際この規定から、携帯電話の電磁波は心臓に悪いと考えている人がたくさんいます。
パナウェーブ研究所による騒動
パナウェーブ研究所とは、2000年前後に日本で活動していた白装束の集団です。キャラバンで移動し、人工的に作られた電磁波は自然環境を汚染し、動植物、やがては人類も滅亡するとして、危険性を訴えていました。
携帯の電波が入らないような場所で、電磁波から逃れるために共同生活をしていたこともあり、当時は何度もメディアで報じられていました。様々な問題を起こしながらも、何年も活動していたが、団体の代表が亡くなったこともあり、いつの間にか自然消滅していたようです。
このように、電磁波に対して不安を抱いた人が反対活動をしていた過去があります。機械のない状況で、元々自然環境で生きていた人間だからこそ、いつの時代も電磁波を出す製品に対する不安はあるのでしょう。
スマホによる健康被害
5Gの健康被害の一つとして、発がん性を訴える声があります。しかし、電磁波による発がん性は5Gが原因ではありません。なぜなら携帯電話時代から「発がん性があるかもしれない」と言われているからです。
実際に、WHOのがん専門機構である国際がん研究機関(IARC)は、2011年に携帯電話を「発がん性があるかもしれない」というグループに分類しています。
ただし、端末を人体のごく近くで使った場合に限定した場合です。実際にブラジャーのカップの中に携帯電話を入れて持ち歩いていた人が、その箇所にがんの腫瘍ができた事例があります。
直接体に当てて持ち歩いたり、スマホ操作中に寝て枕のようにしてしまったりした場合に人体への影響があるとされています。
しかし、一般的な使い方では発がん性は確認できていません。可能性が否定できないために、長期的な研究が必要です。電磁波が脳にも影響があるとされているため、スマホ自体の使い方を見直す声も上がっています。
5Gに健康被害は認められないという意見
5Gの健康被害を訴える声を確認するために、様々な研究機関が調査に乗り出しています。
5Gに反対する人は、健康被害を調査した上で導入してほしいと考えているため、確実に健康被害がないと断言できるまで調査が必要です。
現在は、健康被害はまだよくわかっていない部分が多いです。しかし、専門家による調査結果では、悪影響は与えないと判断しています。
19年12月米連邦通信委員会(FCC)による調査結果
5Gの健康被害を懸念して、米上院議員が2018年FCCに検証を求めました。その結果、2019年12月に5Gに健康被害は認められないと判断しています。
出典:アメリカ合衆国通信総務省
11年WHO(世界保健機関)による調査結果
WHOが2011年に調査した結果では、携帯電話の通信による電磁波の影響はタルク粉や酢漬けの野菜と同等と宣言しています。
携帯電話の通信は何十年も使われているため、健康被害があるかどうか十分な検証がされています。その上で、重大な健康被害は確認されていません。
18年米国食品医薬品局(FDA)による調査結果
5Gの健康被害について、2018年FDAも影響はないと発表しています。携帯電話の無線周波数事体が、安全性源内にあるため、人々の健康には大きな影響はありません。
5Gの電磁波は人体に悪影響がない
5Gの電磁波が人体に悪影響がないと判断を下している理由は、人体に悪影響になる電波の正体がわかっているからです。
人体に悪影響を及ぼす電波は「電離作用」のあるものだけです。周波数は3000THz、紫外線やレントゲンなどに使われています。
携帯電話の電磁波は無線やラジオなどと同じ種類の電磁波を使っており、電子を電離する作用を持っていない電磁波です。つまり、5Gになっても携帯電話の電磁波では、人体には影響がありません。
携帯電話のように体の近くで日常的に使う機器は、SAR値が2W/kgに定められています。この基準値を超えなければ、人体に影響を与える心配はありません。
5G基地局は放射能が従来より減少
5Gは超高速、超低遅延、超多同時接続を実現しています。電波がこれまでと比べ物にならないくらい良くなるため、放射能も強まると心配されています。
しかし実際は、2G時代の基地局から、5Gの基地局に至るまでに放射能自体は減少傾向。4Gから5Gに変わった中でも、放射能が減少しているのがわかります。
4G時代は大型基地局の仕事率は40ワット、5Gになると10ワットになるのです。つまり、5Gの通信速度向上の要因は、電波干渉を抑制し受信感度を上げたことによって得られたものだと考えられます。
電磁波の健康被害は熱作用のみ!
携帯電話の電磁波による健康被害の中で確認されているのは、熱作用だけです。強い電波を浴び続けると、体温が上がるとされています。これを利用したのが電子レンジです。電子レンジは電磁波により、様々なものを温めています。
また、熱作用と同時に刺激作用というものもあります。これは強い電磁波を受けると、ピリピリしたような感覚に陥るものです。体内に電流が流れることによって生じます。
ただし、雷や線の剥離部分を触った時のような強い刺激ではありません。静電気をイメージするとわかりやすいでしょう。
これら二つは明確に人体の影響として確認されていますが、他に電波に対する影響は確認されていません。
5Gの健康被害は明確に確認されていない
5Gの健康被害に関する様々な不安が飛び交っています。しかし、複数の団体が科学的な根拠に基づいて、健康被害がないことを発表しています。
まだまだ実験数が少ないために、断言しきれない面も多く、立証するには時間がかかるでしょう。
そのような状況のため、小さな不安から、5G反対派が積極的に訴えを起こし、反対派や過敏になっている人たちが、健康被害を訴えているケースも多いです。
5Gの健康被害については、長きにわたる戦いが起こりそうです。ただ、デマ情報や不安をあおる情報だけを鵜呑みにして、必要以上に心配する必要はありません。
情報源を確かめて、正しい情報を掴めるようにしましょう!